貴方に出逢えたこと。
      それだけで私は幸せなんです。








      Geranium 〜君ありて幸福〜







      「・・・ここ、何処?」
      うーん、全然思い出せない。確か、あー・・・。父さんと森で剣の稽古してたんだ。
      うん、ちょっとずつ思い出してきた。それで湖のそばで休憩してて、湖から手が・・・って・・・、
      ちょっと待てちょっと待て落ち着け自分。

      「・・・・・・ぃ・・・」

      いやいや湖から手とかありえないだろ。でも引っ張られた記憶が・・・。
      落ちる!って思った瞬間此処にいたし・・・。

      「・・・おいっ!!」

      「うわぁっ!?」

      やば、本気で吃驚した。人が近付いてたのにも気付かないなんて・・・。
      そんな事を考えながら声の主に目を向けると、そこには綺麗だけど不機嫌と警戒が入り混じった紫水晶。
      闇のように深い黒髪。まだ幼さの残る、それでも端正な顔立ち。・・・あたしよりちょっと年下(たぶん)。
      格好からして、何処かのお坊ちゃんかな?それにしてもピンクのマントって。

      「おい貴様、聞いているのか!」

      「ごめん少年。全然聞いてなかった。」

      「・・・・・・はぁ。」

      何ですかその溜息は。何ですかその馬鹿な人でも見るような目は。
      これでも頭はいいんだぞ!

      「何故此処に・・・ヒューゴ邸の庭に居るのかと聞いている。」

      「何故って・・・・・・・・・・・何でだろう?」

      「僕に聞くなっ!」

      いやホント分かんないんだって。大体此処どこよ?
      こっちが聞きたいっての。

      『記憶喪失・・・じゃないですか、坊ちゃん。』

      頭に直接響くような声。え、幻聴?
      だって此処にはあたしと少年しかいないし・・・。精霊でもいるのかな?

      「何この声・・・誰?」

      「『!!』」

      あたしがそう言って少年を見ると、驚いたように此方を見ていた。
      そ・・・そんなに変なこと言った・・・?

      「お前、シャルの声がき『わぁ!!僕の声が聞こえるんですか!』・・・シャル。」

      少年の声が先ほどの声に遮られる。・・・あ、不機嫌そう。
      それにしても、やっぱり姿が見えない。シャルって名前なのは分かったけど。

      「・・・?何処にいるの?」

      「ここだ。」

      そう言って見せてくれたのは少年の腰にあった剣。
      素直に綺麗だと思った。
      剣が喋るはずない、とか少年頭おかしい?とか思うよりも先に。
      それだけあたしはその剣に魅せられていた。

      『初めまして!僕はソーディアン・シャルティエ。それで僕を持っているのがマスターのリオン坊ちゃんです!ええと、君のなま「煩いぞ、シャル。」』

      いきなり始まったマシンガントークに固まっていると、それを見かねた少年―リオンというらしい―がぴしゃりと言い放つ。
      それにしても・・・、と考える。
      喋る剣なんて。きっとリフィル先生が知ったら大喜びだろうな。
      いやあたしも嬉しいけど。だって剣が喋るとかすっげー楽しいじゃん?
      そこでふと思った。
      喋る剣なんてシルヴァラントでもテセアラでも聞いたことがない。
      てことは此処はあたしの世界じゃない・・・・?

      「ねぇ少年。ここは・・・・・・シルヴァラント・・・?」

      いきなりのあたしの真剣な表情に少年は少し困惑したような表情になったがしっかりと答えた。

      「・・・シルヴァラント?何を言っている。此処はセインガルドの首都、ダリルシェイドだ。」

      『それがどうかしたんですか?』

      ・・・何か普通に会話に混じってる。まぁこれは置いといて・・・。

      「・・・・・・・・来ちゃったみたい、異世界。」



      沈黙。


      「ちょっと!!何この沈黙!まるであたしが痛い人みたいじゃん!!」

      「・・・・・そんな証拠が何処にある。」

      さっきより更に痛い人を見るような目で問う少年。
      くっそー・・・、今の発言は自分でも痛い人だと思ったけど!!!

      「此処にいきなり現れたじゃん!」

      「そんなのは証拠にならん。」

      「うぅ・・・、じゃあこれでどうだ!」

      そういって現したのは自分の背中から生えている―紫色の金に輝く羽。
      これなら少年も信じてくれるだろう!
      案の定、少年は目を見開いて羽を見ている。

      『坊ちゃん・・・』

      「ああ・・・信じるしかないようだな・・・。」

      やりぃ!流石あたし♪
      ってよく考えたらあたし行くとこないじゃん!!

      「おい、着いて来い。」

      「へ?」

      今何と仰いましたかこの少年。
      少年は呆れた様に溜息をつき、再度口を開いた。

      「お前にはソーディアンマスターの資質がある。それをヒューゴ様に報告しに行くんだ。それに、行くところも無いんだろう?」

      「お・・・仰ルトオリデス・・・。」

      「なら黙って着いて来い。」

      そういって屋敷の方へ足を進める少年。
      えーっと・・・。何か話がうまい具合に進んでるんですが・・・。

      ・・・まぁいっか!
      取り敢えずこの広そうな屋敷で迷子にならないように少年の後に続く。

      『そういえば、名前はなんていうんですか?』

      あ、忘れてた。ていうか主人よりもお喋りだな、この剣。
      賑やかなのはいいけどな。

      「。・アーヴィングだ。」







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