君の笑顔は僕の氷の様に冷たい心を
      少しだけ溶かしたような気がした。








      Geranium 〜君ありて幸福〜




      「じゃあこれでどうだ!」

      そう言って僕に見せたのは、こいつの背中から生える金に輝く紫色の、羽。
      それは僕が今まで見てきたどんなものより綺麗で。

      『坊ちゃん・・・』

      シャルにそう言われるまで魅入っていた。
      確かに人に羽が生えているなど聞いたことがない。あるとすれば、物語に出てくる天使くらいだ。
      ―異世界からやってきた―というのも、こいつの目を見る限る嘘ではないだろう。
      何よりこの羽が証拠、という訳か・・・。



      「おい、あんまりきょろきょろするな!」

      「え〜、だってこんな大きな屋敷初めてなんだよ〜♪♪」

      『あはは、は好奇心旺盛なんですね。』

      「そうそう!分かってるね、シャル!」

      ヒューゴの書斎へと向かう廊下で繰り広げられる会話。というか、何故こいつらはこんなに馴染んでるんだ!
      こいつ―・アーヴィングというらしい―は、女だというのに何処か男のような喋り方をする。腰に2本の剣を携えているあたり、戦闘も出来るのだろう。
      黙っていればそこら辺の女よりずっと綺麗な顔立ち。笑うだびにふわりと揺れるハニーブラウンの髪は思わず触りたく・・・。

      「(何を考えているんだ、僕は・・・。)」

      大体僕にはマリアンがいるじゃないか。マリアンさえいてくれれば・・・。
      それにこいつもきっと。

      「リオーン?」

      「・・・・・・・・・・・何だ。」

      「そんなぶすーっとしてたら折角の可愛い顔が台無しだぞー?」

      「か・・・っ!う、煩いっ!!」

      「あはははっ!照れてる照れてる!」

      「貴様・・・・・・・・!」

      『坊ちゃん落ち着いて!・・・・ふふ』

      「シャルも笑うなっ!」

      マリアン以外とのこんなやり取りいつ以来・・・いや、きっと初めてだ。
      そのときふと頭に温もりを感じた。

      「リオン。」

      見上げれば、僕より高めの身長のが頭を撫でている。
      その表情は優しさに溢れていて、そうまるで

      ―天使―

      「リオン。辛いのか?」

      どきりとした。
      こんな逢って間もない人間が僕の何が分かるというんだ。
      こんな、こんな・・・。

      「・・・っ。お前の思い過ごしだ。」

      「リオン。」

      もう一度名前を呼ばれ振り向くと、先ほどのからは想像できないような真剣な瞳。
      まるで全てを見透かすようなスカイブルー。

      「泣きたいのなら思い切り泣けばいい。誰も咎めたりしないよ。」

      「っ!!」

      目の前いっぱいに広がる優しい香りに、マリアンとはまた違う感情が心の奥から湧き上がってくる。
      途端、僕の目から泪が溢れる。
      それは留まることを知らないように、の胸を濡らしていく。


      「御許に使えることを許したまえ。響け、壮麗たる歌声よ」

      「ホーリーソング」


      その声はまるで天使の子守唄―――






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      泣き虫坊ちゃん。